補遺

どうしたら
「ここ」はまた「再生」するんだろう?
ずっと そんなことを 考えては
自分のしでかしたことを忘れないために
毎日1回は、読み返してしまう。

どうして言ってくれないの?
「あんたじゃだめなんだ」と。
扉の前で全身耳にして
人間の心眼心耳の限界に触れて
わずかな音、空気の動き、におい、温度、言葉、表現されたものすべてに追いすがるように読み取ろうとしてきた者に。
「このドアは私に向かっては、開かない。永久に」
その事ひとつ、火に触ったように知らされるなら、すぐに立ち去ったのに。
開くこともせずに通り過ぎたのに。

そんなに暇じゃない。
そんなに健康でもない。
そんなにやさしくない。
肉体が有限であるように
この心も
愛もまた有り余るものではない。
少なくとも私は。

「誰でもいい」なら私を。
なんて。自惚れ過ぎなのか?

なぜだ。
期待などさせないでくれ。
求める匂いなど消し去ってくれ。
私はこれが病気だと知る前、そうして生きていた。
人を 愛を ぬくもりを 安らぎを 求めるにおいを
完全に消して「生きて」いきたいと願っていた。
「誰か」
どんなにこの中に響いても
応える者などある筈もない
そんな「声」は願いは
微塵も纏わぬ「人間」としてありたいと願った。
静かで冷たく穏やかな「心」を。
誰より「幸せ」でありたいのだと。

どんなにあなたを怒らせ泣かせても
私はあなたの敵ではないし
あなたが何かをしてくれないなら
味方をしない者でもない。
どんなあなたも大事。
傍で見ていたい。
傍で何かをしたい。
目がつぶれるまで
手脚が腐るまで
それだけが、変わらない、変わるだろってずっと思ってるのに変わらない。いい加減に変わって欲しい。諦めさせてよ。見棄てさせてよ。私にだって。
だって。
こんなことの繰り返しだもの。

言えよっ!『誰でもいいけどお前じゃだめだ』って!
寂しいけどお前じゃイヤだって!
「一生そこでそうしてな 私はもう知らない。関係ない」
または
「じゃ、いつかあんたからドアを開けられる相手が現れること、祈ってるから」
って立ち去れるんだっ!
「私じゃ、だめなんだ」「だよねー、自惚れすぎぃ☆」と
離れようとする度に諦めようとする度に誰か?大人の声が呼び止める。
耳鳴りのような・・・

たくさんの痛み。
たくさんの孤独。苦しみ。傷。つらさ。憎しみ。嫉妬。「汚い」と言われる、気持ち。理解されない感覚。
ここを探ろうとすると
開けて貰いたいって願うと
こんな風にね いつも 傷つけ 怖がらせ 汚してばかり。

昔 私が原因不明の脚の痛みで じっと寝ていてもうなされ、近くを歩かれるだけでも泣き叫ぶほど痛みに苦しんだみたいに
この子の安心で安全な領域 は、普通の人間の息がかかるだけで、視線が届くだけで リアルの世界の空気の触れるだけで
そんなにも痛み・傷つき・汚れやすい場所。
触れてはいけなかったのか。
見なかったふりを一生続けなければいけなかったのか。
自分が正しかったなどとはいつも全然思えない・・。

でもだけどね。
それでもね。
私は、この中の人の、孤独や恐怖や苦しみ痛み悲しみをよく知っている気がした。
本当は、ここから出たい、のだと
本当は、世界は、生きるに値する場所だと、
自分を含めた人間は、愛するに値するものだと、
信じたい・・・のだと、
思って「いた」。